gen_cop
は特定のクライアントを相手にTCPでコネクションを確立して通信するプロセスを作成するためのライブラリであり,Erlangの標準の gen_tcp
モジュールが提供する,ソケットに対するcontrolling processの概念をより高級に扱えるようにラップしたもの.cop
は “Connection-Oriented Protocol” の頭字語で,gen_cop
を用いてトランスポート層のコネクションの確立を前提とした上位のプロトコルに基づいてサーバ側で動作するプロセスが実装できることを指す.
前提: ソケットの controlling process とは,TCPのソケット Socket
と(gen_tcp:controlling_process/2
によって)関連づけられ,Socket
に外部から送られてきたバイト列を {tcp, Socket, Dat}
の形のメッセージで受け取れるようになっているプロセスのこと.
gen_cop
によって生成されるプロセスを以降単に gen_cop
サーバプロセス と呼ぶことにする.gen_cop
サーバプロセスでは,ソケットを介してクライアント側(双方向通信だが便宜的に以後こう呼ぶ)から届いたデータを扱ったりソケットを介してクライアント側にデータを送ったりする ハンドラ という機構が列になって並んでおり,このうちの1つに「今有効なものはこれ」というフォーカスが当たっている.フォーカスの当たっているハンドラが実際に処理を担い,他のハンドラはフォーカスが当たるまで待機する.
また,gen_cop
サーバプロセスは(クライアント側から届くデータだけでなく)別プロセスから gen_server:cast
か gen_server:call
で送られたメッセージおよびその他一般のメッセージを受け取ることができ,この受け取り処理もそのときにフォーカスの当たっているハンドラが行なう.
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
┃ gen_cop Server Process ┃
┃ ┏━━━━FOCUS━━━━┓ ┃
┃ ┌───────────┐ ┃┌───────────┐┃ ┌───────────┐ ┌───────────┐ ┃
┃ │ Handler 1 ├─┃┤ Handler 2 ├┃─┤ Handler 3 ├─ … ─┤ Handler N │ ┃
┃ └───────────┘ ┃└───────────┘┃ └───────────┘ └───────────┘ ┃
┃ ┗━┯━━━━━━━━┯━━┛ ┃
┃ │ ┌────┐ │↑ data() ┃
┃ │ │ ┌──┴─┴──┐ ┃
┃ │ │ │ Codec │ ┃
┃ │ │ └──┬─┬──┘ binary() ┃
┃ │ │ │ └────────────────────────────────────╂─ ← received via the associated socket
┃ │ │ │ ┃
┃ │ │ │ iodata() ┃
┃ │ │ └──────────────────────────────────────╂─ → sent via the associated socket
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━┿━┿━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
request() │ │ data()
│ │
│ └── ← received from other processes via gen_cop:send/2
└──── ← received from other processes via gen_cop:call/3 or gen_cop:cast/2
各ハンドラは,クライアント側からソケットを介して届いたバイト列や,別プロセスから送られたメッセージが自分の対処するものではないと判断して,ハンドラ列上で次にあるハンドラに処理を委任 (= delegate) することもできる.ハンドラから委任の旨が示されると,gen_cop
サーバプロセスはフォーカスを次のハンドラに移し,以降はそのハンドラがソケットから届くバイト列や他プロセスから送られるメッセージの処理を担う.
gen_cop
では,クライアント側からソケットに送られてきたバイト列をデコードして得られたデータを data()
(または message()
)という型で扱う(これは一般にコーデックごとに異なる型の実体をもつ).これらのデータを以後 受信データ と呼ぶことにする.また,gen_server:call
や gen_server:cast
によって送られてくるプロセス間メッセージを リクエスト と呼ぶ.
-type from() :: {pid(), Tag :: term()}
内部メッセージの送信元を表すデータの型.gen_cop_handler
ビヘイビア参照.
- ※
gen_cop
モジュールの実装ではこの型はterm()
と定義しているが,実装としてはgen_server
ビヘイビアのコールバック函数handle_call/3
の第2引数に与えられる形式と同じである.
-type data() :: term().
gen_cop:send/2
の第2引数に渡すとエンコードされて最終的にTCPでソケットを介してクライアント側に送信されるデータ,またはクライアントからの受信データの型であり,用いる gen_cop_codec
ビヘイビアを実装したモジュールごとに(すなわち送受信されるデータ用のコーデックごとに)異なる.gen_cop_codec:codec()
参照.
-type request() :: term().
gen_cop
サーバプロセスが同期的または非同期的に受けつけるリクエストの型であり,一般にはハンドラごとに異なる.gen_cop_handler
ビヘイビア参照.
ただし,以下のいずれかの形式にマッチする値は内部表現用に予約されており,request()
型の値としては使えない:
get_logger
which_handlers
{'$send', Data}
-spec start(
inet:socket(),
gen_cop_codec:codec(),
[gen_cop_handler:spec()],
start_opts()
) ->
{ok, pid()}
| {error, start_err()}.
-type start_err() :: {already_started, pid()} | timeout | term().
start(Socket, Codec, HandlerSpecs, Options)
で関連づけるソケットを Socket
,用いるコーデックを Codec
,ハンドラ列の指定を HandlerSpecs
として gen_cop
サーバプロセスを立ち上げる.起動オプションは以下:
-type start_opts() :: [start_opt()].
-type start_opt() ::
{link, boolean()}
| {name, otp_name()}
| {ack_fun, ack_fun()}
| {async, boolean()}
| {owner, pid()}
| {on_owner_down, on_owner_down()}
| {spawn_opt, [term()]} % TODO: more specific typespec
| {timeout, timeout()}
| {debug, [term()]} % TODO: more specific typespec
| {logger, logi:context()}.
-type ack_fun() :: fun(() -> any()).
-type on_owner_down() :: fun((OwerPid :: pid(), OwnerExitReason :: term()) -> ExitReason :: term()).
link
- 呼び出したプロセスとの間にリンクを張るか否か.
- デフォルトは
false
で,リンクを張らない.
name
- 名前つきで起動する際の指定.
- 指定しなかった場合は名前なし.
ack_fun
gen_cop
サーバプロセスの初期化時にそのプロセスで呼び出される,サーバプロセスをソケットのcontrolling processにするための処理の指定.- 省略された場合,
gen_cop:start/4
を呼び出した側のプロセスでgen_tcp:controlling_process(Socket, ServerPid)
が評価され(ただしServerPid
は立ち上がったばかりのgen_cop
サーバプロセスのPID),起動処理と並行してソケットとプロセスの関連づけを行なう処理が走る.
async
- 起動処理を非同期にするか否か.
true
を指定すると,gen_cop
プロセスが起動した際の文脈の初期化処理が完了するのを待たずに戻り値が返る.- 文脈については後述の
gen_cop_context:context()
を参照.
- 文脈については後述の
- デフォルトでは
false
,すなわち初期化完了を待つ同期的な起動を行なう.
timeout
async
がfalse
の場合に,初期化完了を最大でどれだけ待つか.- デフォルトは
infinity
.
owner
- 生成した
gen_cop
プロセス から モニタを張って監視する対象のプロセス. - この監視対象のプロセスが死んだ場合は
gen_cop
プロセスもそれを受けて終了する. - 省略した場合は特にどのプロセスも監視しない.
- 生成した
on_owner_down
owner
に指定したプロセスが死んでDOWNのメッセージが届いた際に起動される終了処理.- 省略した場合は
gen_cop:default_on_owner_down/2
が用いられる.
spawn_opt
- 内部的にプロセスの起動に使用する
proc_lib:spawn_opt/4
に与えるオプション. {link, true}
を指定している場合は,ここにlink
は指定しなくてよい.- 省略した場合は(
link
の有無のみ別として)[]
.
- 内部的にプロセスの起動に使用する
debug
gen_cop
サーバプロセスをOTP準拠のプロセスとするために要請される debug structure を作成する過程でsys:debug_options/1
に与えるオプション.- 省略時は
[]
が与えられた場合と等価.
logger
logi
モジュールのlogger instanceの指定.- 省略された場合は
logi:make_context/0
により新たにつくられる.
-type otp_ref() ::
(Name :: atom())
| {Name :: atom(), node()}
| {global, Name :: term()}
| {via, module(), Name :: term()}
| pid().
後述の send/2
,call/3
,cast/2
で使われる,gen_cop
サーバプロセスを指し示すデータの型.OTPで用いられる形式と同じ.
-spec send(otp_ref(), data()) -> ok.
第1引数に与えた gen_cop
サーバプロセスに紐づいているソケットを介してクライアント側に第2引数のデータを送る.データは gen_cop
サーバプロセスのもつコーデックによりエンコードされる.非同期処理であり,戻り値 ok
は gen_cop
サーバプロセスへの指示が完了した時点で返る.
-spec call(otp_ref(), request(), timeout()) -> term().
gen_cop
サーバプロセスに対して同期的なリクエストを送る.フォーカスの当たっているハンドラからの返信が戻り値となる.
-spec call(otp_ref(), request()) -> ok.
gen_cop
サーバプロセスに対して非同期的なリクエストを送る.戻り値は送信が終わると即座に返る.
送受信されたデータのエンコード・デコードを担う.
codec()
はコーデックの型.基本的にはエンコーダとデコーダの組だが,バイト列が受信データの途中で切れていてデコード時に未処理部分として余る状況や,デコード処理そのものが文脈依存の場合にも対応できるように,エンコード・デコード用の状態も保持する.この状態の型は codec_state() :: term()
で表される.
-
※
codec()
型の宣言は-opaque
ではないが,実質的に抽象型. -
※ 型の気持ちとしてはデコード中の状態の型
T
と最終的にデコードして得られるメッセージの型M
をパラメータとしてcodec(T, M)
という要領だが,ここでのT
に相当するものはgen_cop_codec:codec_state() :: term()
,M
に相当するものはgen_cop:message() :: term()
とそれぞれ表され,パラメータが暗黙化されたcodec()
という定式化にしている.
gen_cop_codec
ビヘイビアを実装したモジュールの名前の型.
-type codec_module() :: module().
エンコード結果とデコード結果の型.gen_cop:message()
と codec_state()
型に依存して以下のように定められる.エンコード結果の本体は binary()
ではなく iodata()
であることに注意:
-type encode_result() :: encode_result(codec_state()).
-type encode_result(State) ::
{ok, iodata(), State, gen_cop_context:context()}
| {error, Reason :: term(), State, gen_cop_context:context()}.
-type decode_result() :: decode_result(gen_cop:message(), codec_state()).
-type decode_result(Message, State) ::
{ok, [Message], State, gen_cop_context:context()}
| {error, Reason :: term(), State, gen_cop_context:context()}.
-spec make(codec_module(), codec_state()) -> codec().
エンコーダとデコーダの組を gen_cop_codec
ビヘイビアを実装したモジュールとして第1引数に,デコード・エンコード用の状態として初期状態を第2引数にそれぞれ与えてコーデックを作る.
-spec make(codec_state(), encode_fun(), decode_fun()) -> codec().
-type encode_fun() ::
fun((
[gen_cop:message()],
codec_state(),
gen_cop_context:context()
) ->
encode_result()).
-type decode_fun() ::
fun((
binary(),
codec_state(),
gen_cop_context:context()
) ->
decode_result()).
make/2
と同用途だが,モジュールを介さず,直接エンコード用函数とデコード用函数を直接渡してコーデックを作る.encode_fun()
と decode_fun()
は gen_cop_codec
ビヘイビアが要請する encode/3
と decode/3
の型とそれぞれ同じ.
-spec get_state(codec()) -> codec_state().
-spec set_state(codec_state(), codec()) -> codec().
デコード・エンコード中の状態をそれぞれ取得・設定する.
-spec encode([gen_cop:message()], codec(), gen_cop_context:context()) -> encode_result().
encode(Messages, Codec, Context)
でコーデック Codec
を用いてメッセージ列 Messages
をエンコードしつつ文脈 Context
を更新する.
-spec decode(binary(), codec(), gen_cop_context:context()) -> decode_result().
decode(Bin, Codec, Context)
でコーデック Codec
を用いてバイナリ Bin
をメッセージ列へデコードしつつ Context
を更新する.
エンコード・デコードの実装を与えるためのビヘイビア.コールバックとして以下を要請する:
-callback encode([gen_cop:message()], codec_state(), gen_cop_context:context()) -> encode_result().
-callback decode(binary(), codec_state(), gen_cop_context:context()) -> decode_result().
codec_state()
はコーデックごとに異なるような状態の形式であり,例えばパケットとして送られてくるバイト列がデータ列にデコードできない中途半端なところで切れる場合に未処理のバイト列を保持するなどの用途に使える.
- ※
gen_cop:message() :: term()
はデコードされたデータの型であり,コールバックモジュールごとに異なるので実質的にパラメータである.
-type spec() ::
{module(), arg()}
| {module(), arg(), spec_opts()}.
-type spec_opts() :: [spec_opt()].
-type spec_opt() ::
{id, id()}
| {callback, callback_opts()}.
-type callback_opts() :: [callback_opt()].
-type callback_opt() ::
{init, init_fun()}
| {handle_data, handle_data_fun()}
| {handle_call, handle_call_fun()}
| {handle_cast, handle_cast_fun()}
| {handle_info, handle_info_fun()}
| {terminate, terminate_fun()}
| {code_change, code_change_fun()}.
spec()
は,ハンドラの振舞いの指定に相当するデータである, gen_cop_handler
ビヘイビアを実装したモジュールの名前 Module
とその Module:init/2
の第1引数に与える Arg :: arg()
の組 {Module, Arg}
につく型(arg() :: term()
については gen_cop_handler
ビヘイビアの節を参照).オプションを伴って {Module, Arg, Opts}
とすることもできる.オプションのないものは []
がオプションに指定されたのと同じ扱い.
オプション:
id
- ハンドラのIDの指定.
- 省略した場合はモジュール名
Module
が使われる.
callback
Module
が提供するコールバック函数(の一部)を適宜上書きして利用したい場合に指定する.
ハンドラの実装に要請されるビヘイビア.以下のコールバック函数を要請する:
-type state() :: term().
-callback init(arg(), context()) -> handle_result().
-callback handle_data(gen_cop:data(), state(), context()) -> handle_result().
-callback handle_call(gen_cop:request(), gen_cop:from(), state(), context()) -> handle_result().
-callback handle_cast(gen_cop:request(), state(), context()) -> handle_result().
-callback handle_info(gen_cop:info(), state(), context()) -> handle_result().
-callback terminate(Reason :: term(), state(), context()) -> handle_result().
-callback code_change(OldVsn :: term(), state(), Extra :: term(), context()) -> handle_result().
ただし, context()
と handle_result()
は以下のようなエイリアス:
-type context() :: gen_cop_context:context().
-type handle_result() :: gen_cop_context:handler_result().
- ※
state()
とarg()
は一般にコールバックモジュールごとに異なるので実質パラメータ.
-opaque context().
通信の文脈を保持するデータの抽象型.ソケットやコーデック情報のほかハンドラの列を保持しており,またその列の要素のうちのどれにフォーカスが当たっていてアクティブであるかの情報ももっている.届いたデータやリクエストをさばく処理はそのフォーカスが当たっているハンドラのコールバック函数が担う.
主に gen_cop_handler
ビヘイビアで使用される,文脈の更新処理の戻り値.
-type handler_result() :: handler_result(term()).
-type handler_result(Reason) :: {ok, context()} | {stop, Reason, context()}.
-spec ok(gen_cop_handler:state(), context()) -> handler_sesult().
主に gen_cop_handler
ビヘイビアの各コールバック函数中で戻り値をつくるのに使われる.ok(State, Context)
でフォーカスの当たっているハンドラの状態を State
にするように文脈 Context
を更新したものを返す.
-spec ok(context()) -> handler_result().
文脈をリセットする(つまりフォーカスの当たるハンドラを先頭に戻す).
- ※ APIから文脈をリセットする方法は,正常系ではこの函数のみ.
-spec delegate_data(gen_cop:data(), gen_cop_handler:state(), context()) -> handler_result().
典型的には gen_cop_handler
ビヘイビアを実装したモジュールのコールバック函数 handle_data/3
の中で戻り値を作るのに使う.「受信データに対し,このハンドラでは何もせず,ハンドラ列上の次のハンドラにフォーカスを移して委任する」ことを表す値を返す.ハンドラの状態を更新しない場合は 第2引数を省略して delegate_data/2
を用いてもよい.
-spec delegate_call(term(), gen_cop:from(), state(), context()) -> handler_result().
典型的には gen_cop_handler
ビヘイビアを実装したモジュールのコールバック函数 handle_call/4
の中で戻り値を作るのに使う.「gen_server:call/{2,3}
で送られてきた同期的リクエストに対し,このハンドラでは何もせず,ハンドラ列上の次のハンドラにフォーカスを移して委任する」ことを表す値を返す.ハンドラの状態を更新しない場合は 第3引数を省略して delegate_call/3
を用いてもよい.
-spec delegate_cast(term(), gen_cop_handler:state(), context()) -> handler_result().
delegate_call/4
の非同期リクエスト版.
-spec remove_handler(
gen_cop_handler:id(),
RemoveReason :: term(),
context()
) ->
{ok, context()}
| {error, ErrorReason, context()}
when
ErrorReason :: not_found | in_active | term().
remove_handler(Id, RemoveReason, Context)
でIDが Id
であるようなハンドラを文脈 Context
から除去する.指定したIDに対応するハンドラが見つからなかったときは not_found
のエラーが,IDに対応するハンドラが現在フォーカスの当たっているハンドラだった場合は in_active
のエラーがそれぞれ返される.
この処理の際に,除去されるハンドラに対してコールバック函数の HandlerMod:terminate(RemoveReason, HandlerState, ContextIn)
が呼び出される(ただし,ContextIn
はハンドラ列を HandlerMod
のみとするような文脈へと Context
を更新したもの).このコールバック函数の呼び出しが {ok, ContextOut}
を返したら,ContextOut
のハンドラ列を(正常に Id
が除去されてフォーカスがそのままの状態へと)元に戻して Context1
とし,戻り値を {ok, Context1}
とする.
-spec get_codec(context()) -> gen_cop_codec:codec().
文脈からコーデックを取り出す.
-spec set_codec(gen_cop_codec:codec(), codec(), context()) -> context().
文脈中のコーデックを更新する.
以下はAPIではなく内部実装についての記載.
ハンドラ1つごとの処理を扱っている.処理自体はおおよそ gen_cop_handler
ビヘイビアを実装したモジュールへ丸投げされている.
-define(HEADER, ?MODULE).
-record(?HEADER, {
id :: id(),
module :: module(),
init :: init_fun(),
handle_data :: handle_data_fun(),
handle_call :: handle_call_fun(),
handle_cast :: handle_cast_fun(),
handle_info :: handle_info_fun(),
terminate :: terminate_fun(),
code_change :: code_change_fun()
}).
-opaque header() :: #?HEADER{}.
module
gen_cop_handler
ビヘイビアを実装したモジュールの名前が保持される.make_instance/1
によって引数のspec()
型の値から取り出されてここに設定される.
id
spec()
のオプションのIDが取り出されてここに設定される.オプションで指定のない場合はモジュール名が転用される.
- 他:
- 基本的にはフィールド名に対応する
Module
のコールバック函数を保持するが,spec()
のオプションのcallback
に対応する函数名の指定があった場合はそちらを優先して保持する.
- 基本的にはフィールド名に対応する
-type handler() :: uninitialized_handler() | initialized_handler().
-type uninitialized_handler() :: {header(), arg()}.
-type initialized_handler() :: {header(), state()}.
-type state() :: term().
uninitialized_handler()
は {Module, Arg, Opts} :: spec()
の Module
と Opts
から make_instance/1
で Header :: header()
をつくって {Header, Arg}
としたものの型.引数が Module:init/2
に渡される初期化が済んでいないという意味でuninitialized.
-spec make_instance(spec()) -> uninitialized_handler().
spec()
での指定をもとに未初期化のハンドラを作る.
-spec init(uninitialized_handler(), context()) -> gen_cop_context:handler_result().
init({Header, Arg}, Context)
でほぼ単に Header:init(Arg, Context)
を呼び出すだけ.
-spec handle_data(
gen_cop:data(),
intitialized_handler(),
gen_cop_context:context()
) ->
gen_cop_context:handler_result().
handle_data(Data, {Header, State}, Context)
でほぼ単に Header:handle_data(Data, State, Context)
を呼び出すだけ.
通信用のソケットやコーデックなどをまとめて文脈としたもの.
-record(?CONTEXT, {
%% TODO: user_state (connection global state)
socket :: inet:socket(),
codec :: gen_cop_codec:codec(),
handlers = [] :: [gen_cop_handler:handler()], % XXX: non-empty check
done_handlers = [] :: [gen_cop_handler:handler()],
send_queue = [] :: [term()] % TODO: type
}).
-opaque context() :: #?CONTEXT{}.
socket
は初期化以降は変更されない.codec
は初期化以降はAPIの set_codec/2
で明示的に更新される以外での変更はない.初期化が終わった段階では handlers
に [initialized_handler()]
型のハンドラ列が入っており,done_handlers
は空リスト.
handlers
と done_handlers
がメッセージハンドリングの中核をなす.handlers
のリストの先頭にあるハンドラが “フォーカスの当たっている” ハンドラで,これが受信データやリクエストを処理する.
フォーカスは delegate_{data,call,cast,info}
が呼ばれることによって後続のハンドラへと移り,フォーカスを外れたハンドラは done_handlers
にアキュムレータとして蓄積される.
文脈の初期化.同一IDのハンドラが複数指定されている場合はエラーが返る.
-spec init(
inet:socket(),
gen_cop_codec:codec(),
[gen_cop_handler:uninitialized_handler()]
) ->
{ok, context()}
| {stop, Reason}
when
Reason :: {already_present, gen_cop_handler:id()} | term().
第3引数に指定されたリストの後ろの要素から順に handlers
フィールドに追加しつつ(したがって最終的に handlers
フィールドのリストは正順になる),gen_cop_handler:init/2
を呼び出して初期化している(各ハンドラの初期化で(正常なら)gen_cop_context:ok/2
が呼ばれ,その際にハンドラ列中の対応するハンドラの状態が登録されて uninitialized_handler()
型の値が intitialized_handler()
型の値に置き換えられる).以降文脈中の handlers
のハンドラ列はすべて initialized_handler()
の形となる.
-spec next_handler(gen_cop_handler:state(), context()) -> context().
文脈中で畳み込み用に現在フォーカスされているハンドラ(= handlers
フィールドのリストの先頭にあるハンドラ)を done_handlers
に移し,フォーカスを次のハンドラに当てる.
-spec fix_handlers(context()) -> context().
done_handlers
に移していたハンドラたちを元の順番で handlers
に戻し,畳み込み中でない形へリセットする.
-spec flush_send_queue(context()) -> {ok, iodata(), context()} | {error, Reason :: term(), context()}.
文脈の send_queue
フィールドに溜まったメッセージ列を iodata()
にエンコードし,かつ文脈の send_queue
を空にしてそれぞれを返す.
-spec recv(binary(), context()) -> handler_result().
recv(Bin, Context)
でソケットから受信したバイナリ Bin
を処理する.文脈 Context
中に保持しているコーデック Codec
を用いて gen_cop_codec:decode(Bin, Codec, Context)
を呼び出してメッセージ列へとデコードし,そのメッセージ列を handle_data
で舐めて文脈を畳み込む.
プロセスの起動やメインループを担う.“gen_server
形式” のメッセージを受け取ることなどを想定した実装になっている.
内部函数.文脈の send_queue
に溜まったメッセージを gen_cop_context:flush_send_queue/1
で iodata()
にエンコードして取り出し,gen_tcp:send/2
でソケットを介して送信する.
内部函数.ソケットからデータ {tcp, …, Bin :: binary()}
を受信すると handle_recv(Bin, State)
で呼び出される(ただし State
はメインループで保持されている gen_cop
プロセスの状態).これは gen_cop_context:recv/2
を呼び出すことで State
の context
フィールドに保持されている文脈を更新する.